仕事のため三鷹に行き,バスに乗った。
バスは相席すれば座れる程度の混雑だった。
「兄ちゃん,こっち空いてるぞ」
一番奥の席まで向かおうかとしていたところ,一人のじいさんに隣の席を勧められた。
「兄ちゃん,高そうな時計しているな。1千万円とかするんか。」
「いや,そんなに高い時計じゃないですよ。3万円しませんから。」
「そうかー。ワシの時計なんか40年間これじゃ。」
じいさんが見せてくれた時計は確かに古く,メッキが一部剥がれているようにも見えたがきちんと動いていた。サイズは男物にしては少し小さいかな,とも思えた。
「いやー,むしろ凄いじゃないですか40年前の時計がまだ動いているなんて。」
「そうかの−。ゼンマイ巻かなきゃならんポンコツじゃ。それはクオーツか?」
「電波時計ですけど,今じゃ機械式時計の方が偉いですから。」
時計の話が一通り終わると,じいさんと私の会話も途切れた。
バスを降りるとき一言挨拶しようと思っていたが,じいさんは明後日の方向を向いていて挨拶し損ねてしまった。
じいさんは,今日も隣に座った人に自慢の腕時計を見せているんだろうか。
2014年3月21日金曜日
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